渚のオーロラ。富山の春を告げる風物詩「ホタルイカの身投げ」

富山県在住の有料メルマガ『あるきすと平田のそれでも終わらない徒歩旅行~地球歩きっぱなし20年~』の著者・あるきすと平田さん。富山の春の味覚といえば、茹でたてを酢味噌に付けると、もう無限に食べられそうなアレ! ……ということで、他の都道府県民からすれば羨ましい事この上ない「富山県民のホタルイカを巡る日常」を、平田さんが紹介してくれました。

※本記事は現段階でのお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウィルスの国内情報および各施設などの公式発表をご確認ください。

富山の春は花粉症とホタルイカとともにやってくる

例年にない大雪に見舞われたここ富山の平野部の雪はほぼ解けてしまい、仰ぎ見る立山連峰も麓のほうから徐々に雪が消えていっています。

入善町から望む立山連峰。
標高2999メートルの剱岳

富山で春を告げる海産物といえばホタルイカ。あの神秘的な青い光を発する体長7センチほどの小さなイカです。毎年3月1日がホタルイカ漁の解禁日ですが、今年は荒天で不漁が続いていました。

13日のスーパーでの地元産の売値は10匹で580円と高値のまま

しかし11日から数日間にわたって快晴だったおかげでようやく定置網にかかるようになってきました。

と同時に、夜中になると県東部の富山市から朝日町の海岸にホタルイカが産卵のため大挙押し寄せるようになり、近隣住民はタモ網と懐中電灯持参でそれらをすくいにいきます。

昔から地元では、ホタルイカが砂浜に打ち上げられるさまを「ホタルイカの身投げ」、岸壁にウジャウジャと押し寄せるさまを「ホタルイカが湧く」と呼んでいます。

※参考映像:富山湾、ホタルイカの身投げ (Mysterious Lights of Firefly Squid)

 普通は海に身を投じることを身投げといいますが、ホタルイカは逆に海から陸に向かって身を投じるからです。


僕もそろそろ行こうかなとおもっていたら、先日早朝に友人から電話があり、「ホタルイカ、いる? 夜中にホタルイカ爆湧き。あっちこっち配ってる最中です」と。

もちろん、「ちょーだい、ちょうだいちょうだい!」というわけで、いただきました。

なんでも大型のクーラーボックスに入り切らないほどタモ網ですくったとか。どれだけでも持ってってくださいといわれたけど、キトキト新鮮なものを適量食べたい主義なのでボールに半杯ほど、100匹前後をもらいました。

朝捕れの地元産ホタルイカ。これだけあれば3日は食いつなげる

そしてさっそく茹でて昼めしのおかずに。

茹でると、いやもう、ぷっくらと膨らんで弾力抜群なんです、これが。そして出だしの3月半ばにしては大きめ。すべて産卵まぎわのメスなので体内に無数の卵を宿しています。捕獲されなければ産卵していたはずで、ごめんねごめんねという気持ちも少しありまして。

でも、辛子醤油をちょこっとつけて口の中に放り込み、いきなりガブッとやらずにまずは弾力あるプリップリ感を歯と舌で味わい、それからおもむろにガブッとやると、もう止まりません。次から次へと口中に放り投げ、ムシャムシャムシャムシャ。

ああ美味い!

朝もらったホタルイカを昼に茹でて食べられる幸せ

その夜に行きつけの居酒屋「浜多屋 魚津駅前店」に行くと、なんとホタルイカの沖漬けが出てきました。見たところまだ生きているのかと錯覚したくらいに美しいです。これも朝捕れの新鮮なもので、酒と薄味の醤油がホタルイカのからだの中までしっかり染み込んでいて、日本酒のアテに最高の味でした。

浜多屋特製ホタルイカの沖漬けと初物のタケノコ。当然、ビールから日本酒へ

さらに次の日の昼ごはんもホタルイカ。今度は酢みそで食べます。地元では酢みそ和えがホタルイカのもっともポピュラーな食し方で、この時期はどの家庭でも酢みそを常備しています。

今度は酢みそ和えで

すでに地元の山から採ってきたフキノトウの天ぷらも居酒屋で食べたし、これからしばらくは春の海幸山幸が続くので、花粉症に負けることなくおいしいものを堪能するぞ!

  • image by:あるきすと平田,とやま観光推進機構
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1962年4月13日富山県魚津市生まれ。横浜市立大学卒。大学1年で横浜から富山まで東海道・北陸道経由で18日間歩き、3年のとき東京深川から山形県鶴岡市まで23日間かけて奥の細道を歩いたことで、徒歩旅行の魅力にハマる。卒業後は中国専門商社マン、週刊誌記者を経て、ユーラシア大陸を徒歩で旅しようと、1991年ポルトガルのロカ岬を出発。おもに海沿いの国道を歩きつづけ、路銀が尽きると帰国してひと稼ぎし、また現地へ戻る生活を約20年間つづけている。

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